図書館は、なんのためにあるのだろう?
【出展コンセプト】
これは、当社設立時(1979年)の事業計画書です。図書館への出版流通がたいへん未熟で不便だったこと、そしてそれを解決するための具体論が示されています。
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近年,公共図書館の建設の増加とともに,図書購入費の伸長は著しく,昭和48年度の公共図書館図書購入総額約32億円に対し,昭和54年度のそれは約90億円と約3倍に達しています。
公共図書館の急速な増加が,我国の図書館行政に対する地域住民の強い要望と,図書館関係者及び地方公共団体の熱意に支えられていることは無論でありますが,一方,出版物すなわち活字メディアの受け持つ情報機能そのものが,それら情報の集積場所としての図書館を必要とするともいえるのであります。
すなわち,図書館の増加は,基本的には情報量の増大に対する新しい社会的ニーズであり,従って公共図書館の新館建設と図書購入量の増大傾向は,今後とも続くものと考えねばなりません。
しかしながら,図書館市場における大量の図書の需要のほとんどすべてが,注文品扱いのルートによらざるを得ないことから生ずる物流速度の遅滞は,図書館側の不満を大きくし,しかも,物流と同時に正確な目録カード等の迅速な供給を伴う点で,図書館への流通コストは通常の流通マージンを大幅に上廻る高率なものとなっております。そして,この新しい市場に対する出版流通の対応は,必ずとも円滑とはいえぬ現状であります。
㈱図書館流通センターは,出版界と図書館界の協力に基づき,現行の出版流通基盤を原則として尊重しつつ,主として公共図書館への新しい専門的流通システムを開発して流通コストを低減せしめ,その流通を円滑にするために,次の業務を行う予定であります。
- ㈳日本図書館協会旧整理事業部の図書館納本業務を分離継承する。
- ㈳日本図書館協会本部で集約した出版情報に基づき,新刊図書をシステム販売する。
- 上記システムに組み込まれた電算印刷カード目録カードを使用して,納本図書の加工整理を行う。
- 新館開館時の,選書から納本に至る一貫業務に迅速に対応できる電算システムを開発運営する。
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その後、当社はこれを忠実に実行し、図書館への円滑な書籍流通システムを確立してまいりました。また、多くの図書館にTRC MARCをご採用いただいた結果、当社の流通システムと図書館の業務システムが相互に連携し、図書館への書籍流通は画期的な進化を遂げました。
1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が公布されました。2003年の地方自治法改正で、議会承認を受けた法人その他の団体への公の施設の管理運営委任が可能になりました。以来、当社は図書館整備計画への関与や図書館運営の受託など、活動の場を拡げてまいりました。書籍流通は外部からの図書館業務支援ですが、これらは図書館と一体化した支援と考えられます。
図書館と共に歩んできた当社は、おかげさまで間もなく設立40年を迎えます。図書館とその周辺環境が大きく変わる中で、当社もそれに適応した新しいサービスを提供したいと考えています。今年の展示は、“図書館と地域”“図書館の選書と蔵書構成”がテーマですが、ここには「図書館は、なんのためにあるのだろう?」という本質的な問いが含まれています。新しいことを考えるためにも、まずはこの問題にじっくり向き合って行きたいと思います。