◆第20回図書館総合展記念フォーラム◆
本フォーラムでは、電子出版・電子図書館をめぐる出版界と図書館界のこの10年の歴史的経緯を総括し、これからの出版界と図書館界の協同の歩みを展望します。
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2008年4月26日の日本出版学会春季研究発表会の特別シンポジウム「デジタル時代の図書館と出版」において、長尾真・国立国会図書館長が私人の立場で公表したいわゆる「長尾構想」が発表されてちょうど10年となりました。2009年には国立国会図書館の所蔵資料大規模デジタル化、2010年にはいわゆる電子納本制度の答申が行われるなど、国立図書館のデジタルアーカイブ化の動きに対して、日本の出版界は電子出版事業の円滑な発展を阻害するのではという観点から危惧を表明していました。
一方、日本の出版界では2013年にKADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店が設立した日本電子図書館サービスの「LibrariE」に象徴されるように、公共図書館向けのコンテンツ提供については積極的に行うように大きく変化してきました。今日では、公共図書館の電子図書館導入において最も高いシェアを誇る「TRC-DL」、多言語対応が可能な「楽天OverDrive」などの電子書籍貸出サービスが次第に定着しつつあり、2018年4月には長崎市立図書館において公共図書館では初めての「ディスカバリーサービス」が開始され、本文検索によるレファレンスサービスの高度化が図られるようになりました。
2007年7月、Googleが「ブック検索」のサービスを日本でも開始し、2009年に日本ペンクラブが声明「グーグル・ブック検索訴訟の和解案について」を発表してからほぼ10年、日本の出版界、図書館界は出版コンテンツの本文検索の時代に本格的に突入しようとしているのです。
本フォーラムでは、電子出版・電子図書館をめぐる出版界と図書館界のこの10年の歴史的経緯を総括し、これからの出版界と図書館界の協同の歩みを展望します。